2024年9月25日(水) の18:30から一般社団法人 生成AI協会(GAIS)が主催する「第12回 GenAI 勉強会」が、港区立産業振興センターの 11F 小ホールで開催されました。
当日は、リアルとオンラインのハイブリッドで進行し、懇親会では活発な意見交換が行われていました。
(1)中山五輪男氏「生成AIとノーコードの融合がもたらす新たなDXの世界」(アステリア株式会社 CXO/首席エバンジェリスト)
アステリア株式会社のCXOおよび首席エバンジェリストである中山五輪男氏が「生成AIとノーコードの融合がもたらす新たなDXの世界」について講演されました。中山氏は、欧米諸国におけるアプリ開発の内製化の現状と比較し、日本の企業文化がDXの進展を阻害していると指摘。その解決策としてノーコード技術の活用を提案しました。ノーコードは、プログラミングの知識がなくてもアプリ開発を可能にし、DXを加速させる重要なキーワードです。また、中山氏は、ChatGPTを代表とする生成AIがノーコードによるアプリ開発をさらに効率化する点をデモを交えながら紹介しました。ノーコードと生成AI、この2つの技術の融合が、日本企業のDXを推進するための鍵であると語られました。
(2)名古屋彩美氏「マーケティングに活かす!生成AIの 活用法と成功のヒント」(株式会社LayerX マーケティング / IKIGAI lab.モデレーター)
株式会社LayerXのマーケティング担当であり、IKIGAI lab.モデレーターの名古屋彩美氏が「マーケティングに活かす!生成AIの活用法と成功のヒント」について講演しました。名古屋氏は、マーケティングでの生成AIの活用は、ペルソナ作成や広告文作成だけに留まらず、レビュー分析や画像データの認識・分析、ビジュアル化といった幅広い分野にまで広がると解説しました。特に、生成AIを使うことで、定性的なデータの効率的な分析やヒートマップの活用が可能となり、マーケティング戦略の精度向上に繋がると述べました。さらに、生成AIを活用する際には、競合データや市場データを組み合わせることでより精度の高い出力が得られると強調。名古屋氏は、マーケティングにおける生成AI活用の楽しさも共有し、今後の展開に期待を寄せました。
(3)髙橋和馬氏「コミュニティを活用した生成AIの組織定着」(IKIGAI lab. コミニティオーナー/富士フイルムビジネスイノベーション株式会社 生成AI活用トレーナー)
IKIGAI lab.のコミュニティオーナーであり、富士フイルムビジネスイノベーション株式会社で生成AI活用トレーナーを務める髙橋和馬氏が、「コミュニティを活用した生成AIの組織定着」について講演しました。髙橋氏は、個人で生成AIを使いこなしていても、組織に定着させるのは難しいと感じている企業が多い現状に触れ、IKIGAI lab.の取り組みを紹介しました。彼が率いるコミュニティは、大企業で生成AIの社内推進に取り組むメンバーが集まり、メディア発信やイベント開催を通じて情報共有と学びの場を提供しています。講演では、生成AIが一般的なSaaSとは異なり、柔軟な使い方やアップデートの速さに対応する必要があることから、組織に定着させるためには、学び続ける環境や教えられる人材が重要であると指摘しました。また、コミュニティ活動を通じて、個々のメンバーが成長し、持続可能な組織変革を目指していることを強調しました。
(4)佐藤傑氏「OpenAI o1登場!最新AI活用法!」(株式会社Uravation 代表取締役)
株式会社Uravationの代表取締役である佐藤傑氏が「OpenAI O1登場!最新AI活用法!」について講演しました。佐藤氏は、最新のOpenAIモデル「O1」の特徴と活用法を紹介しました。O1の特徴として、従来のGPT-4とは異なる高度な推論能力と自己修正機能を挙げ、特にチェーンオブソート(思考の連鎖)の実装により、より深い理解と精度の高いソリューション提供が可能になっていると解説しました。また、O1は推論の過程が多いタスクやプログラミング、戦略的意思決定、教育・学習支援などに強みを発揮する一方で、単純な文章作成においてはGPT-4に劣るケースもあると説明。さらに、O1のプロンプトテクニックについては、シンプルかつ直接的な指示を与える方が効果的である点や従来のプロンプトとは異なる特徴を持つことを指摘しました。講演ではO1を活用したプログラミングのデモや今後のAIツールの展開についても触れられ、最新のAI技術への期待が高まる内容となりました。
(5)ライトニング・トーク: 森 一弥氏「報告:データ連携利活用WG」(アステリア株式会社 エバンジェリスト+GAISエバンジェリスト)
アステリア株式会社のエバンジェリストであり、GAISエバンジェリストでもある森一弥氏が「データ連携利活用WG」についての報告を行いました。森氏は、生成AIを活用する企業に向けて、データ連携におけるノウハウを紹介。特に、DeFi(データ統合基盤)を使ったナレッジ登録に関するテクニックを解説しました。講演では、デフォルトの設定ではPDFファイルなどが正確に読み込めないケースがあるため、データの形式を適切に加工する必要性を強調。また、容量制限を緩和するための設定変更や、CSV形式を使ったデータの整理方法など、実践的なアドバイスも提供しました。森氏は、データ連携の精度向上には継続的な調整が必要であり、社内文書の内容やフォーマットに合わせてカスタマイズすることが重要であると述べ、今後の取り組みに向けたヒントを共有しました。
この勉強会では、全体を通して生成AIの活用における最新の動向と、具体的な取り組み方が非常に有意義に共有されました。ノーコード技術との融合によるDXの加速や、マーケティングでの生成AIの実践事例など、AIが企業のさまざまな領域でどのように革新をもたらすかが、具体的かつ実践的に語られたのが印象的です。特に、生成AIを組織全体に定着させるためには、コミュニティの力や学び続けられる環境の整備、継続的な調整が必要であるというメッセージは、多くの参加者にとって実践的で貴重な学びとなったはずです。また、最新のAIモデルの登場により、推論能力やプロンプトテクニックの進化が示されたことで、生成AIのさらなる可能性と新たな課題に目を向ける機会ともなりました。
この勉強会が伝えたのは、生成AIを最大限に活かすには、単なるツールとして導入するだけでなく、自社の目的に合わせて柔軟にカスタマイズし、社員全体で学び続ける姿勢が不可欠だということです。まさに、今この技術をどう取り入れ、活用していくかが、今後の企業の競争力を左右するという、実務に直結した強いメッセージが伝えられました。参加者にとって、この勉強会は、生成AIの可能性を広げるだけでなく、自社の成長戦略にどう組み込むかを考える貴重な一歩になったと言えるでしょう。