2024年8月21日(水) の18:30から一般社団法人 生成AI協会(GAIS)が主催する「第11回 GenAI 勉強会」が、港区立産業振興センターの 11F 小ホールで開催されました。
当日は、会場付近はゲリラ豪雨に見舞われ、リアル参加を断念した方が何人もいらっしゃいましたが、会場内は、いつも通りの雰囲気で、リアルとオンラインのハイブリッドで進行しました。
(1)山口正人氏「パーソナルAIがもたらすクローンビジネスの可能性」(株式会社オルツ アライアンスヘッド新規事業開発部アライアンスマネージャー)
株式会社オルツのアライアンスマネージャーの山口正人氏は、パーソナルAI技術を活用したデジタルクローンビジネスの可能性について講演しました。オルツが開発する独自のクローンモデリングエンジンを通じて、個人のライフログデータから思考や意思、癖を反映したデジタルクローンを生成し、企業の業務効率化や人事管理、教育分野、事業継承支援など、幅広い応用を提供していると説明。また、エンターテインメント業界でのバーチャルアイドルの創出や、インフラデータを活用した介護・医療支援など、新たな展開も追求していることを強調しました。また、オルツが単にパーソナライズ化に特化するだけでなく、広範なAIソリューションを提供し、AI技術の普及とビジネスの変革を目指していると述べています。
(2)佐藤一憲氏「GeminiとVector Searchによる生成的推薦とマルチモーダル意味検索」(グーグル合同会社 Google Cloud デベロッパーアドボケイト)
グーグルの佐藤一憲氏は「GeminiとVector Searchによる生成的推薦とマルチモーダル意味検索」について講演を行いました。佐藤氏は、RAG(Retrieval Augmented Generation)システムの構築における最大の課題として、ゼロから構築する際の複雑さと品質の不安定さを指摘しました。その解決策として、Google検索技術を活用したRAGソリューションとして、Vertex AI SearchとGeminiを用いたグラウンディングの利用を提案しました。これにより、信頼性の高い情報検索が可能となると主張しています。
さらに、佐藤氏は生成的推薦システムについても説明し、LLMの推論能力を活用してユーザーの意図を深く理解し、効果的なクエリを生成する方法を紹介しました。デモとして、動物画像データセットを使用した「Infinite Nature」や花束推薦システムを紹介し、これらのシステムが高品質な画像推薦と関連情報の提供を行い、ユーザー体験の向上に寄与することを強調しました。これらの技術は、特にeコマースや業務システムにおいて、大きな利点をもたらすと述べています。
(3)松本国一氏「富士通が進めるAIの未来」(富士通株式会社 シニアエバンジェリスト)
富士通株式会社のシニアエバンジェリストである松本国一氏は、AI技術の未来に向けて富士通が取る包括的なアプローチについて説明しました。富士通が長年にわたりAI研究を続け、現在は独自の生成AI技術の開発やAIの信頼性を高める技術に注力していることを強調しました。また、同社が提供する「Fujitsu Kozuchi」プラットフォームについても触れ、7000件以上のAI導入実績を基に、さまざまな業界で実用的なソリューションを展開していると述べました。さらに松本氏は、富士通が次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発を進めていることについても言及しました。このプロセッサは、ARM V9-Aアーキテクチャを採用し、AIおよび高性能計算(HPC)向けに最適化された高性能・省電力な国産プロセッサです。ソフトウェア面では、東京工業大学、東北大学、理化学研究所と協力して進めている「Fugaku-LLM」プロジェクトについて説明し、日本独自の大規模言語モデル(LLM)の開発を推進していることを明らかにしました。このプロジェクトは、世界最速のスーパーコンピュータ「富岳」を活用して、日本のAI技術の競争力強化を目指しています。松本氏はこれらの取り組みを通じて、富士通がハードウェアとソフトウェアの両面からAI技術の革新を推進し、人間とAIが共生する未来を見据えた技術開発を行っていると強調しました。これにより、社会におけるAIの信頼性を高め、技術革新を通じて未来の課題に対応していくことを目指していると述べています。
(4)ライトニング・トーク
続いて、GenAI 勉強会恒例のライトニング・トークに移りました。ライトニング・トークは、最大10分の枠の中で、様々な発表を行うセッションです。
・安次嶺一功氏「AI駆動開発 〜 生成AIが導く未来の開発手法」(株式会社I-Tecnology取締役+AI駆動開発勉強会 運営委員会)
安次嶺一功氏(株式会社I-Tecnology取締役、AI駆動開発勉強会運営委員会)は、「AI駆動開発 〜 AIが導く未来の開発手法」というライトニングトークで、AIを活用した新しい開発手法を紹介しました。安次嶺氏は、AI駆動開発がソフトウェア開発の全フェーズで生成AIや大規模言語モデル(LLM)を主に活用することで、開発スピードの向上、品質の統一、リリースタイムの高速化を目指すものであると説明しました。具体例として、ChatGPTやGitHub Copilot、Amazon CodeWhisperer、Devin、Open DevinなどのAIツールを挙げ、特にGitHub Copilot Workspaceが上流から下流工程までを一貫してサポートし、将来的に開発工数を70-80%削減できる可能性があることを強調しました。また、安次嶺氏は、AI駆動開発勉強会がFacebookグループでの情報交換や定期的な勉強会を通じて、AI駆動開発に関する知見を共有していることも紹介しました。
・嶋 是一氏「報告:人材育成・教育WG」(株式会社KDDIテクノロジー CTO)
嶋 是一氏(KDDIテクノロジー CTO)は、GAISの人材育成・教育ワーキンググループの活動報告を行いました。主な内容は、8月2日・3日に国会議員会館で開催された教育AIサミットの参加報告です。
このサミットは、佐藤雄太氏が実行委員会代表として主催し、目標の2000人を超える参加者を集めました。さらに、65自治体の教育委員会、AWSなどの大手企業、文部科学省や経済産業省を含む複数の省庁、そして超党派の国会議員も参加するという、大規模なイベントとなりました。
GAIS事務局の村岡氏の報告では、GAISがAI相談室を設置し、法人会員とのマッチングを行ったことや、GAISの場でサミット主催者同士が出会ったことなども取り上げられました。GAISは今後も勉強会やセミナーを開催し、最新のAI情報の共有や活用方法の討論を進めていく予定です。
・森 一弥氏「報告:データ連携利活用WG」(アステリア株式会社 エバンジェリスト)
アステリア株式会社のエバンジェリストでありGAISのエバンジェリストでもある森一弥氏が、ライトニング・トークで、GAISのデータ連携利活用ワーキンググループ(WG)の活動について報告しました。森氏は「ラグ分科会」というサブグループの活動を紹介し、オンラインでのディスカッションを中心に行っていることを説明しました。GAISの公式ウェブサイトでは、「Dify」(ディファイ)が人気の検索ワードとなっており、Difyは生成AIアプリを簡単に作成できるノーコードツールです。森氏はDifyを使用したLLM(大規模言語モデル)アプリケーションの構築例を紹介し、ナレッジベースを活用した質問応答システムや、質問内容に応じてドキュメントを切り替える仕組みについて説明しました。また、LLMの使用回数を最適化し、コストと速度のバランスを取る方法についても言及しました。最後に、ナレッジベース作成のコツや、個別相談の受付、ラグ文化会への参加募集についても触れ、発表を締めくくりました。
会場では、講演終了後に、懇親会が行われ、活発な意見交換とネットワーキングの場となっておりました。
次回、「第12回 GenAI 勉強会」は、9月25日(水)に開催されます。
参加申込はこちらになります → https://gais.jp/gais12/