2025年2月26日(水) の18:00から一般社団法人 生成AI協会(GAIS)が主催する「第14回 GenAI 勉強会 ~ 生成AI最新動向をキャッチアップ!」が、京橋エドグラン 29階のインキュベーションセンターで開催されました。
当日は、リアルとオンラインのハイブリッドで進行し、懇親会では活発な意見交換が行われました。

(1)「経産省プロジェクト「GENIAC」GPT-4超え小型モデルを開発 ~ 日本語性能に優れ、ローカルで自由に使える!」木下正文 氏(株式会社ABEJA 経営企画統括部 部長 執行役員)


株式会社ABEJAの木下正文氏は、経産省プロジェクト「GENIAC」で開発中のGPT-4を超える小型言語モデルについて講演を行った。ABEJAはDX推進企業として、コンサルティングから運用まで一貫支援し、特にAIを活用した課題解決に強みを持つ。GENIACプロジェクトでは、精度とコストの劇的な進化により、企業が独自の小型モデルを容易に構築し、ローカルで自由に運用できる世界が間近に迫っていることが背景にある。ABEJAはその中で、企業固有の業務タスクに特化した高性能モデル開発を進めており、既にローカル環境での実用化に成功している。また、将来的にはモデル開発そのものよりも、その基盤となるデータ整備がDXの成功を左右する重要な要素になると強調。具体的なDX事例として、製造業の配管検査をAI化し大幅な効率化を達成した三菱ガス化学の事例などを紹介した。講演全体を通じて、非連続的な進化を遂げる言語モデルの進展を踏まえ、企業は今の段階からオペレーションやデータ基盤を整えることが、今後の競争優位を築くための重要な一手であると述べた。
(2)「今、押さえておきたいOpenAI最新アップデート情報」
國末拓実 氏(アンドデジタル株式会社 チーフAIエバンジェリスト)
名古屋彩美 氏(株式会社LayerX マーケティング / IKIGAI lab.モデレーター)


國末拓実氏と名古屋彩美氏が講演した「今、押さえておきたいOpenAI最新アップデート情報」では、2025年以降の重要なOpenAIの新機能が解説された。特に注目されたのは、ChatGPTの「Scheduled tasks」機能であり、指定した時間にニュース取得や英語学習の問題生成などを自動化できる。さらに、科学や数学に特化した高速モデル「O3ミニ」や、高度な論理推論が可能な新たなモデルの登場で、従来のGPTとは異なる強力な推論力が示された。また、深い情報収集を可能にする「DeepReserch」機能や、ブラウザ操作を自動化する「Operator」機能も紹介され、AIが日常やビジネスの細かなタスクまで浸透する未来が提示された。さらに、GPT-4.5とGPT-5のリリース計画も示され、AI技術の急速な進化と活用方法の広がりが予感される内容となった。
(3)「予算総額2億円!ひろしまAIサンドボックスの『自由提案型』が募集開始!」
吉田晴貴 氏(株式会社エル・ティー・エス)


株式会社エル・ティー・エス(LTS)の吉田晴貴氏が、広島県が推進する「ひろしまAIサンドボックス」の講演を行った。同プロジェクトはAIを活用した新規ビジネス創出や地域イノベーションの促進を目指すもので、「自由提案型」と「課題提案型」の2種類でAI開発者を募集している。自由提案型は開発者のアイデアを広島県内企業とマッチングさせる仕組みで、採択された場合は開発費用の半額、最大1億円の補助を受けられる。課題提案型は県内企業の課題に対し開発者が提案する形だ。吉田氏は、「特に広島に拠点のない企業が新しい市場やネットワークを広げる絶好の機会」と語り、東京大学本郷キャンパス近くで2025年3月7日に開催される説明会への参加を呼びかけた。
(4)「音声合成に利用される生成AI」木村優志 氏(株式会社オルツ 技術本部 R&D部 AIエンジニア)


木村優志氏(株式会社オルツ 技術本部 R&D部 AIエンジニア)による講演「音声合成に利用される生成AI」では、生成AIが音声合成の分野でどのように応用されているかを解説した。講演ではまず、人間の発声機構の仕組みを紹介し、音声合成の基礎となる素辺接続やHMM(隠れマルコフモデル)音声合成について説明した。さらに、生成AIの基礎であるGAN(敵対的生成ネットワーク)やVAE(変分オートエンコーダー)、拡散モデル、正規化フロー、フローマッチングなどの最新技術が紹介された。講演ではこれらの技術を具体的な音声合成器の事例を通じて説明。特に拡散モデルを応用した音声合成器や、正規化フローを用いた日本語対応の「Style BERT-VITS2」などが紹介され、高精度で人間の声に近い音声生成が可能になったことが示された。また、LLM(大規模言語モデル)を活用し、音声をトークン化して扱う新しいアプローチについても触れ、これらの技術がボイスクローニングや感情表現、多様な対話システムへと応用されていく可能性を示唆した。
(5)LT:「AI駆動開発の最新動向」荒井康宏 氏(クリエーションライン株式会社 取締役兼CTO)


荒井康宏氏(クリエーションライン株式会社CTO)は「AI駆動開発の最新動向」をテーマに、システム開発の全プロセスをAIで高速化する手法について講演した。AI駆動開発は要件定義からテストまで、複数のAIツールを活用して開発効率を高める。特に生成AIを用いたコード生成が注目され、「Volt」や「Devin」など新しいツールが登場し、短時間で実用的なアプリ作成が可能になった。今後、開発者の役割はコード記述からAIへの指示やフィードバックに変化すると述べた。
(6)LT:「DeepSeekが示す生成AI開発の2つの大きな可能性とは」森 一弥氏(アステリア株式会社 エバンジェリスト/GAIS エバンジェリスト)


アステリア株式会社のエバンジェリストであり、GAISのエバンジェリストでもある森一弥氏は、注目されている生成AI「DeepSeek R1」の可能性を紹介した。DeepSeekは性能が高く、OpenAIのモデルに匹敵し、ウェブ検索や画像生成などを無料で提供するオープンソースAIである。森氏が特に注目したのは、開発における「強化学習」と「蒸留」という2つの技術だ。強化学習は、明確な答えに基づいて学習コストを下げつつ精度を向上させる手法である。一方、蒸留技術は、大規模なモデルの出力を小型モデルに転移学習させることで、小さくても高性能なAIを実現できるという。森氏はこれらの技術を活用することで、日本企業がデータの国外流出を避けつつ安全に生成AIを導入できる可能性を指摘し、生成AI業界全体の活性化を期待した。
(7)LT:「活動報告:生成AI・人材育成+教育WG」嶋 是一 氏((株)KDDIテクノロジー CTO/GAIS 理事)


嶋是一氏(KDDIテクノロジーCTO/GAIS理事)が「生成AI・人材育成+教育ワーキング」の活動報告を行った。同ワーキングでは「人材育成」と「教育」の二つの分野を重点的に取り組んでおり、最近では自主的に生成AIを活用して毎日アプリ開発を続け、論文化や就職成功に至った学生の事例や、小学生が大学生並みのアプリ開発を行う事例を紹介。嶋氏自身が教育分野に携わる中で、従来型の積み上げ型教育だけでなく、自発的な学習方法の重要性を実感したという。また、教育AIサミットやアジア最大級のインターネットイベントであるInterop Tokyoで生成AI教育の特別展示を企画中であり、企業や教育関係者の参加を募っている。嶋氏は、企業内で生成AIの教育を実施・支援できるコアメンバーの結集を呼びかけ、具体的なスキル育成と教育手法の向上を目指している。
(8)LT:「活動報告:生成AI・建築+土木WG」花坂弘之 氏(日本マルチメディア・イクイップメント株式会社/GAIS 事務局)


花坂弘之氏(日本マルチメディア・イクイップメント株式会社/GAIS事務局)は、GAISの建築+土木ワーキンググループの活動報告を行った。同氏は、建設業におけるICTサポートや人材育成を担当し、過去にはAI関連システム開発にも携わった経験を持つ。今回のワーキンググループは、建設業界の課題である人手不足や老朽化するインフラへの対応として、生成AIを活用した効率化を目的として設立された。特に、製造業で成果を上げているリーン生産方式を建設業へ応用し、付随作業(特に書類作成)の自動化を生成AIで進め、本来の付加価値作業に集中できる環境を目指している。勉強会や意見交換会を実施し、現場での生成AI活用法や見積もり作業の自動化など、具体的な活用事例について議論が進められた。
第14回GenAI勉強会は、生成AIの進化が実際のビジネスや社会課題の解決に直結していることを明確に示しました。GAISは今後も、最先端の技術動向や実践的な取り組みの共有を通じて、日本の企業や地域が生成AIを最大限に活用できるよう支援を続けてまいります。
次回「第15回 GenAI 勉強会」は、2025年3月25日(火)に同じ京橋エドグラン29階インキュベーションセンターにて開催予定です。次回は、日立製作所、大日本印刷による講演を予定しております。ぜひ引き続き、多くの皆さまのご参加をお待ちしております!