[ダイジェスト] 1/24(金)開催:AI駆動開発 勉強会(第5回)

2025年1月24日(金)に KDDI DIGITAL GATE にて「AI駆動開発 勉強会(第5回)」が開催されました。GAISは、このイベントの開催を後援していました。
★ 2/3 追記:当日の模様の公式動画が公開されたのでYoutubeリンクを追加しました。

(1)服部佑樹氏「GitHub Update!」

GitHubの服部さんによる「GitHub アップデート」では、OpenAIが発表した「Operator」の話題からスタート。以前からAIに自律的な行動をさせる試みはあったものの、汎用的なアクションを誰もが利用できる形で一般化した点に驚きがあるとのことでした。

続いて、AI駆動開発を考えるうえでの視座が「どのエディターを使うか」ではなく、「何を作り、どこでコラボレーションするか」に移りつつあると解説。そこからGitHubの新プロダクト「Spark」が紹介されました。まだプロトタイプ段階ながら、“開発者”の定義を拡張し、必ずしもコードを書かなくてもアプリケーション開発が進められる未来像を提示しているそうです。オセロの自動対戦モードを例に、複数の候補をAIが提示し、それを人間がレビューして取り込む流れをデモ。コード記述を極力減らしながらも結果を得る様子が非常に印象的でした。さらに「Copilot Extensions」によるエージェント機能も紹介され、わずか数十行のコードでシステムプロンプト付きのbotを作れるという手軽さには驚かされました。Copilotのバックエンドを活用しつつ、社内システムや外部APIを組み合わせれば、独自ツールを素早く構築できるとのこと。Q&Aセッションでは、発火条件やセキュリティ面など具体的な質問も挙がり、エンタープライズ利用を意識したやり取りが印象的でした。

(2)伊東和成氏「AI使ってシステム開発してバイアウトした話」

株式会社サードスコープ取締役COOの伊東和成氏が「AIを使ってシステム開発してバイアウトした話」というテーマで登壇しました。自身が新卒エンジニアとしてスタートし、わずか数年で執行役員に就任、さらに上場企業での非常勤顧問など幅広い活動を行う経緯が語られました。伊東氏によると、バイアウトに至ったプロジェクトは「AIツールをまとめたサービス」。毎日のように登場する新作AIを効率的にストックできる仕組みを欲して開発を始めたところ、わずか1週間で構築し、リリースまで進めたそうです。開発プロセスでは、ChatGPT(当時はGPT-4)や LangChain といった生成AI技術を駆使。要件定義やデータベース設計、画面設計の多くをAIに支援させることで作業工数を圧縮しつつ、実装からパフォーマンスチューニングまで一気通貫で仕上げたといいます。リリース後はTwitter(X)やQiitaへの投稿、関連イベントでの登壇を通じてユーザーを獲得。約1か月で5000人の登録者を集めることに成功しました。その勢いが後押しとなり、「AIツールの代理店的役割」を担う企業と接点を持つに至り、最終的にサービスをバイアウト。ニーズの高まりとスピード感のある開発、そして積極的な露出が大きな決め手となったそうです。さらに現在は、要件定義やセールス領域にも生成AIを取り入れ、ワイヤーフレームの自動生成などを提案段階から行うことでクライアントの信頼を獲得。提案から受注までを短期化する仕組みを確立し、AI駆動開発の可能性を広げています。最後に伊東氏は「最新のツールを素早く取り入れ、アウトプットを積極的に見せていく姿勢が重要」と強調して講演を締めくくりました。

(3)Taishi Yamasaki氏「Solomakerを1週間で作った方法」

Yamasaki氏は、もともとシリコンバレーでZ世代向けメンタルヘルスアプリのCTOを務めていたが、Stable Diffusionに触れた際に「これからは生成AIが主役になる」と確信し、新たにスタートアップを立ち上げたという。彼が開発した「Solomaker」は、個人や小規模チームが自身のプロダクトを気軽に発表し、共有できるプラットフォームだ。リリース直後から1か月ほどで約3万人が訪問し、12万PV以上を獲得するなど、順調にユーザを増やしている。

「1週間で作った」と聞くと驚きだが、その背景にはAIを積極的に活用した“爆速開発”がある。具体的には、生成AI対応の統合開発環境「Cursor」や「Bolt」を使い分けながら、Next.jsやSupabase、Vercelといったツールを組み合わせた。特に一からUIを組むのではなく、AIでひな形を生成してはダウンロードし、複数回にわたってイテレーションを重ねることで、デザインや機能を短期間で洗練させていったという。とはいえ、「AI駆動開発は万能ではない」ともYamasaki氏は強調する。AIに任せればコードはある程度生成されるが、細かなUIの調整やスマホで表示した際のマージン、アニメーションの不具合などは“根性”による地道な修正が必要だ。また、生成AIが複雑なアーキテクチャを完全に把握してくれるわけではなく、ある程度のプロンプトエンジニアリングや手動による修正が必須だという。
Yamasaki氏は「個人や小さなチームでも、AIを活用すればアイデアを素早く形にできる時代が来た。一方で、最終的な品質を担保するには人間の根気が欠かせない。だからこそ、楽しみながら好きなツールを使い、目標を明確にして走り切ることが大事だ」と語った。

(4)松浦隼人氏「AIがテストを作ると開発はどうなるのか」

AIを活用した自動テストプラットフォーム「Autify(オーティファイ)」を展開する松浦隼人氏が、「AIがテストを作ると開発はどうなるのか」というテーマで講演を行った。本社は米カリフォルニアにあるが、社員の多くは日本に在籍。同社ではノーコードでエンドツーエンドテストを自動化する従来のサービスに加え、生成AIを活用した新ツール「Autify Genesis(ジェネシス)」を開発している。ジェネシスは、要件定義書やバグチケットなど「テスト対象の振る舞いが書かれた文書」をインポートするだけで、大量のテストケースを自動生成する仕組みが特長だ。生成されたテストケースは自然言語で記述されたシナリオとして提示され、さらには自動実行フレームワークであるPlaywrightのコードまでも生成してくれる。これにより、QA(品質保証)担当者がコーディングせずともテスト実行が可能になるという。デモでは、ECサイトのカート機能を例に数分で60以上のテストケースが自動生成され、ユーザー名やパスワードといった不足情報は対話的に入力するだけでテストコードの完成に至った。さらに、同社のノーコード型ツール「Autify Next」へコードをインポートすれば、シナリオステップごとに可視化されるため、プログラミングの知識がなくても十分にテストを扱える点が大きなメリットだ。社内利用でも、その効果は顕著だったという。従来、QAマネージャーやエンジニア、PMなど複数人で数時間かけて作成していたテストケースを、ジェネシスが自動生成することで時間が半分以下に短縮できたとのこと。松浦氏は「AIによってテスト作成が楽になっても、QAエンジニアの専門知識はますます重要になる」と指摘し、開発現場はより早く正確なリリースを目指す一方、AIと人の協働でテストの質を高める時代が来ていると強調した。

勉強会の終了後の懇親会では、講師と参加者が、講演内容についての意見交換やネットワーキングを行い、有意義な時間となりました。